voice

【特別企画】MODE OPTIQUE special voice vol.2

今年創刊50号を発行した「MODE OPTIQUE」
メガネ専門誌として業界人、メガネファンのバイブルとなっている本誌の編集長 松崎薫子さんとトニーセイムジャパン細井の対談をお届け。

vol.1,2はモードオプティークvol.50掲載の内容をお届け、vol3以降はwebサイト限定記事になります。どうぞお楽しみください。

モードオプティーク編集長 松崎 薫子

2009年の28号よりモード・オプティーク編集長に就任。モノ・マガジン編集部、編集次長を兼任。モード・オプティーク就任当時は眼鏡の知識は全く無く、知識のあるスタッフとともにスタート。初心の気持ちを大事にしながら、面白がりながら誌面をつくっている。

tonysamejapan: 細井 礼

トニーセイムジャパン代表取締役社長。
視力は良いものの、地元の眼鏡店で出会ったメガネに惚れて購入したことがきっかけでこの世界へ。高校卒業後はアジアを中心とした世界を旅する。36歳3児の父。最近はじめた趣味はアクアリウム

2020AWコレクションの中で、「T-cut」シリーズの新作も意欲作でした。どんな思いが込められているのか気になります。

ありがとうございます。
こちらは、デザイン的にはダブルリムのフローティング構造になっています。

レンズの周りについているプラスチックリムは、取り外しができるという。インナーリムの有無で印象が変わりますね。

はい。もっとマニアックな話をすると、外側のアウターリムは切れ目のない輪っかなんです。

あぁ、本当だ!メタルリムを巻いているわけではないんですね。

そうです。正面視だとかなり細く見えると思いますが、この細さで強度を出すにはリム巻きだと難しくて。

なるほど、だからチタンの一体成型に…?

そう。これだけ立体的なカーブにも関わらず、正面視でのリムの細さは均一になるように切削しています。

あぁ…このすごく複雑な形状を、そのまま純チタンから抜いているということ…?

はい。こんな加工ができる工場は他にないと思いますし、普通は大変すぎてやらないと思います笑

いやぁすごいです。それだけ鯖江の技術というものに対する思い入れがあるのでしょうか?

そうですね。今回の「T-cut」は、工場のトップの人が企画を見て「やりたい」と言ってくれました。

それはうれしいですね。

そんな風に鯖江の職人さんたちがワクワクしてモ作りできるような機会を作ることも私たちの挑戦だと思っていて。

なるほど。それもこれからのトニーセイムの「コネクト」していくビジョンのなかの一つというわけですね。

その通りです。だから「T-cut」のようなマーケティング度外視のモノ作りは今後もやっていきたいですね。

なるほど。最後に、ブランドの未来像について、今細井社長の頭の中にあるイメージは?

今私が描いている夢を一言で表現すると「ポジティブアイウェアのプラットフォーム」ということになりますね。

それは具体的にどういう意味ですか?

今は価格帯もスタイル的にも幅広い商品を作っていますが、それをシリーズごとにブランド化していきたいんです。

つまりひとつひとつのシリーズをもっと研ぎ澄ましていくということですね。

これだけ幅広いモノを作っていると、このSNSの時代にブランドイメージを的確に伝えることって難しんですよね。

はい。それはとても共感できます。

ブランドのある面だけ見て、「私の好みじゃない」となってしまうのって、すごく勿体ないと思っていて。

うんうん。それがプラットフォームという考え方をすると…ちょっと変わってきますね。

眼鏡屋さんにとってはトニーセイムとお付き合いいただくことで、シーズンごとに変化のある商品構成を実現できますし、ブランドが流行らなくなってお店の在庫になるようなことも防げます。

トニーセイムというプラットフォームだけで、ひとつのセレクトショップができちゃうような感じですね。

そうですね。それくらい一つ一つのシリーズをブランディンしていきたいと考えています。

ところで、今社会全体が「SDGs」を重要視するようになっています。エコ素材とか、廃材の出ない3Dプリンタ技術はすでに海外ブランドが取り入れていますね。

はい。私も色々と勉強はしています。ただ、まだまだうちの規模では本質的なサスティナブルブランドというのはハードルが高いと思っています。
ただ、何もしないというのではなくて。

具体的には?

うちはアートを絡めつつ、使用済みの眼鏡や眼鏡の廃材を使ったアップサイクルをやってみようと思っています。それで誰かの心や生活が豊かになれば、それはある種のSDGsへのアプローチだと思っています。

トニーセイムのように元気なブランドを見ていると、私たちも頑張らなきゃと励まされます。

僕らもまた、良い意味での「健全な危機感」を持ち続けながら頑張っていきたいです。

どうもありがとうございました。



part3に続く・・・