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ポジティブな「普通」

普通だけどいい。というように「普通」にはポジティブに受け取れるニュアンスがあると思います。眼鏡フレームのデザインにおいても「普通」のニュアンスは様々。今回はそんなポジティブな「普通」をうまく表現できたと思っているセルロイドシリーズのお話しです。

tonysame: japan 高木 良輔

1998年に眼鏡専門学校に入学し、眼鏡セレクトショップでのアルバイトを開始。卒業後の2002年眼鏡フレームメーカーに就職し、11年間勤務。2013年にトニーセイムジャパン入社。直営店勤務、営業を経て現在は商品企画を担当。

tonysamejapan: 細井 礼

トニーセイムジャパン代表取締役社長。
視力は良いものの、地元の眼鏡店で出会ったメガネに惚れて購入したことがきっかけでこの世界へ。高校卒業後はアジアを中心とした世界を旅する。36歳3児の父。最近はじめた趣味はアクアリウム

セルロイドシリーズが本格的にスタートしてから、丸3年が過ぎました。

2017年の秋からスタートしたので、もう4年目に入った訳ですね。

セルロイドシリーズを代表するモデルTS-10734

そこで、改めてセルロイドシリーズについてお話出来れば、と思います。早速ですが、まずは素材としてのセルロイドについて。

お願いします。

セルロイドはプラスチックの一種で、眼鏡素材としてのプラスチックで、シェアを大きく取っているのがアセテート。木材パルプなどを主原料にしたプラスチックで現代の眼鏡フレームで主流になっている素材です。そしてもう1種類がセルロイド。割合としては、9:1ぐらいで圧倒的です。

そうですね。セルロイドの眼鏡フレームはずっと創り続けているメーカーはあれど、どう考えてもシェアは少ないですね。

はい。セルロイドの特徴として、加工性が良くない部分があるのですが、そこがやはりネックになっていると考えられます。これはあくまで生産側の捉え方ですが。その上、素材そのもののコストも、アセテートと比較すると割高になるので、アセテートの方が後発なのですがどんどんシェアが大きくなっていった、という流れです。

でも、シェアがゼロになることは無いんですよね。

はい。やはりセルロイドには独自の魅力や特性がある、ということだと思います。

実際に扱っていても、いろいろな魅力があると思います。よく言われる独特なツヤ感はそのひとつですね。

トニーセイムで使用しているセルロイドの生地サンプル
この時点では磨きはかかっていないため、表面はくすんでいる。

そうですね。セルロイドならではの深いツヤ感は一般的に最も言われる要素かもしれません。セルロイドメーカーの方にお聞きした事があるのですが、セルロイドの素材特性=「ツヤ感がきれい」にというよりは、セルロイドの特徴として「硬さ」があり、「硬さ」がツヤ感に影響している、とのことです。

そもそも「硬さ」に関しては、特性としてあまり言われていないかもしれないですね。
トニーセイムのセルロイドシリーズを扱ってみると硬さを実感しますけどね。

はい。いい意味でやっぱり硬いです。硬いので、生産工場で磨いてツヤを出す作業は、大変なのですが、その分きれいに磨いたフレームは深いツヤ感をまとっている、ということになります。

硬い分、丁寧かつ磨きの技が必要で、しかもそれが活きる素材ということですね。

トニーセイムのセルロイドシリーズはかなり細身ですが、深いツヤ感はしっかりと感じていただけます。

はい。「細身」という部分に関しても、セルロイドの特徴が最大限生かされています。
先程から言っている「硬さ」に着目して、硬いのであれば、眼鏡として必要な強度を保ちながら、限界まで細くしてみよう、というのがコンセプトです。

「硬さ」に注目して細くするアプローチはこれまであまり見かけませんでしたよね。
今では、同様のコンセプトで企画したどのモデルもありがたいことに大変ご好評いただいています。

セルロイドの眼鏡フレームは、特徴であるツヤ感をしっかりと感じてもらうためにボリューム感のあるデザインが多く、セルロイドという素材に興味を持っていただいた方でも、「なかなかちょうどいいのに巡り合えない」という方も少なからずいたのでは?と思います。

その点、トニーセイムのセルロイドシリーズはスリムなプラスチックフレームをたくさん創ってきた背景を踏まえているので、「ちょうどいい」感じが出せたと思います。

新作のコレクションは、これまでのセルロイドシリーズのスピンオフのようなイメージで、セルロイドインナーリムを使った企画ですね。

はい。今回の企画ではセルロイドの素材特性の中で「寸法安定性」の高さに着目しました。インナーリムは繊細なパーツなので、セルロイドの素材特性を生かせるのでは?と企画を進めていった感じです。

セルロイドのインナーリムというのが今回の企画のメインテーマですが、もう一つ。レンズシェイプの展開にも特徴がありますよね。

そうですね。全3型のシリーズなのですが、3型全部ボストンシェイプです。3型展開で全部ボストンシェイプ、というのは結構珍しいかもしれません。サイズとテイストをそれぞれに変えてありますので、3型の中でお好みのボストンシェイプを見つけていただきたい、という思いです。

女性におすすめなコンパクトなサイジングのTS-10740とTS-10741、ユニセックスでオーバーサイズ気味で掛けていただきたいTS-10743。この3型はなかなか面白いラインナップですよね。

上から TS-10743,TS-10741,TS-10742,TS-10741

TS-10743はオーバーサイズ気味で掛けられるボストンシェイプとして、海外のチームからリクエストがあったので、それに応えるかたちデザインしました。

でも、日本においても意外とご好評いただけましたね。

はい。メンズとして考えるとこれぐらいのサイズもありだよね、というお声をいただきました。もちろん意図している通りに女性がオーバーサイズ気味で掛けていただいても、いい感じのバランスになると思います。

トニーセイムならではのセルロイドによるカラフルさも楽しんでもらえるシリーズですし、
レンズシェイプのバリエーションも含めて、楽しんでいただきたいと思っています。